「先生、英検の教材買ったんですけど、うちの子全然できなくて…」
これは英検対策を受けると必ず聞く相談です。
保護者の方が見せてくれるのは、決まって以下のパターン。
- 「2025年度版 英検準2級 過去6回全問題集」(旺文社)
- 「10日でできる!英検準2級二次試験・面接」
- 「7日間完成 英検準2級予想問題ドリル」
見た瞬間、心の中で思います。「あー、またやっちゃいましたね…」
実は、これらの「定番」「売れ筋」教材こそが、多くの「できない子」を挫折させている元凶なんです。
Amazon で「英検 準2級」と検索すると、必ず上位に表示されるこれらの教材。
でも、「できない子」には毒でしかありません。
今回は、塾業界では常識だけど表には出ない「教材選びの罠」を、現場からの本音で暴露します。
よくある失敗購入パターン5選
旺文社「過去問6回分」系 − Amazon売れ筋1位の罠
保護者の思考回路
- 「英検 準2級」でAmazon検索
- 1位表示される旺文社の過去問
- 「過去問が王道でしょ?間違いない!」
- 即ポチ
現実の悲劇
Day1: 子ども「1問目から分からない...」
Day3: 保護者「解説読んでも理解できないって...」
Day7: 子ども「もうやりたくない...」
Day10: 過去問は本棚の肥やしに
なぜ失敗するのか:
- 基礎ができてない子には暗号レベル
- 解説は「分かっている人」向け
- 挫折率90%以上
実際の相談例: 中3母親「過去問買ったんですが、長文が1行も読めないって言うんです…」
当然です。
過去問は「仕上げ」の教材。
泳げない子をいきなり深いプールに放り込むようなものです。
「○日でできる!」系詐欺 − 短期間アピールの罠
魅力的なタイトル一覧:
- 「7日でできる!英検準2級面接」
- 「10日でできる!英検準2級」
- 「2週間完成!英検準2級」
- 「1ヶ月で合格!英検準2級」
保護者・生徒の心理: 「短期間で済むなら楽そう!これなら続けられる!」
現実:
- 「できる子」が最後の仕上げに使うもの
- be動詞が怪しい子が7日で受かるわけがない
- 挫折→「私はダメなんだ」と自信喪失
実際の指導例: 高1生徒「10日でできるって書いてあったのに、3日目で全然分からなくなりました…自分には才能がないんでしょうか?」
いえいえ、教材選びが間違っているだけです。
「でる順パス単」単体学習の罠
典型的な失敗パターン:
- Amazon で「英検 単語」検索
- 「でる順パス単」が1位表示
- 「出る順なら効率的!」と購入
- ひたすら単語暗記
- 文章で全く使えず挫折
なぜ失敗するのか:
- 読めない子が単語だけ覚えても意味がない
- 文脈なしの暗記は定着しない
- モチベーション維持困難
実例:
生徒「『reputation』は『評判』って覚えました!」
私「じゃあ、この文章読んでみて」
“The company has a good reputation.”
生徒「えーっと…わからない…」
単語は覚えたのに使えない典型例です。
「総合対策本」という名の中途半端教材
セールスポイント: 「この1冊で1次・2次試験完全対策!600ページの大ボリューム!」
現実:
- どの分野も浅い
- 基礎説明は省略
- 分厚いだけで中身スカスカ
よくある光景:
- 600ページの参考書を購入
- 30ページで挫折
- 本棚の肥やし確定
保護者の嘆き: 「高いお金出して買ったのに、全然使ってくれません…」
面接DVD付き高額教材の罠
魅力的な謳い文句:
- 「面接の流れがDVDで分かる!」
- 「本番さながらの体験ができる!」
- 「これで面接は完璧!」
価格:3,000-5,000円
現実:
- DVD見ても話せるようにはならない
- そもそも基本的な英語が口から出ない
- 高いだけで効果ゼロ
生徒の本音: 「DVD見たけど、あんな風に話せません…どうしたらいいんですか?」
DVDを見ることと話せることは全く別です。
なぜこれらが「できない子」には無意味なのか
前提レベルの致命的なギャップ
教材作成者の想定レベル:
- 中学英語は完璧
- 基本的な語彙力は十分
- ある程度の文章読解力がある
- 自分で学習を進められる
「できない子」の現実:
- be動詞と一般動詞の区別があやふや
- 基本語彙も不十分
- 英文を読むこと自体が困難
- 自学自習の習慣がない
このギャップを無視した教材選びは、子どもの心を折るだけです。
心理的ダメージが深刻
失敗の連鎖:
高い期待
「これで受かる!」
↓
現実の壁
「全然できない...」
↓
自己否定
「私は英語ができない...」
↓
学習意欲喪失
「もう英検なんて無理...」
↓
英語嫌いに発展
これが一番の問題。
教材選びの失敗が、子どもの英語人生を台無しにすることもあります。
経済的な無駄も深刻
よくある無駄遣いパターン:
- 過去問集:2,500円
- 10日でできる系:1,800円
- 総合対策本:2,200円
- DVD教材:4,500円
- 合計:11,000円
効果:ほぼゼロ
同じ1万円で基礎教材を買った方が100倍効果的なのに…
騙されない教材選びの鉄則
鉄則1:現実的な自己レベル診断
簡単チェックリスト:
□ be動詞の使い分けが瞬時にできる
□ 三単現のsを間違えない
□ 現在完了形が説明できる
□ 中学レベルの長文が8割読める
□ 基本的な英会話ができる
3つ以上×なら:中学英語からやり直し必須
すべて○なら:準2級教材OK
鉄則2:「○日で合格」系は100%無視
現実的な学習期間:
- 基礎がしっかりある子:3-6ヶ月
- 普通の子:6ヶ月-1年
- 「できない子」:1年以上
魔法の教材なんて存在しません。
地道な積み重ねが唯一の道です。
鉄則3:過去問は最後の最後
正しい学習順序:
1. 基礎文法の徹底理解(3-4ヶ月)
↓
2. 基本語彙の習得(2-3ヶ月)
↓
3. 簡単な長文読解練習(1-2ヶ月)
↓
4. ライティングの型練習(1ヶ月)
↓
5. 1次試験受験・合格
↓
6. 面接対策(2週間)
↓
7. 2次試験受験・合格
S-CBT受験の場合:
4技能を同時受験するため、ライティングと面接対策を並行して行います。
ただし、基本的な学習順序は上記と同じです。
いきなり過去問は絶対NG。
鉄則4:Amazon レビューに騙されない
レビューの罠:
- 合格報告は「元々できる子」だけ
- 失敗談は書かれにくい
- サクラレビューの可能性
- 「星5つ多数」≠ 良い教材
現実的な成功率を知ろう。
鉄則5:価格と効果は無関係
高額教材の真実:
- 価格が高い ≠ 効果が高い
- マーケティング費用が上乗せされているだけ
- 安い基礎教材の方が効果的な場合も
本当に効果的な教材選び
「できない子」に本当に効く教材
段階1:基礎固め(1-2冊目)
『中学英語をもう一度ひとつひとつわかりやすく。』(学研プラス)
- 超基礎から丁寧に解説
- 挫折率ほぼゼロ
- CD付きで発音も練習
『くもんの中学英文法』(くもん出版)
- スモールステップで無理なく進める
- 反復練習で確実に定着
段階2:統合学習(3冊目)
『速読英単語 入門編』(Z会)
- 短い英文で語彙学習
- 文脈で自然に単語を覚える
- 音読練習で定着
合計:約4,000円
無駄な教材1万円より、この4,000円の方が100倍効果的。
無料でできる対策も活用
英検協会公式(無料):
- バーチャル面接体験
- 過去問3回分ダウンロード
- 各級のサンプル問題
YouTube活用:
- 中学英文法解説動画
- 英検面接練習動画
- 基礎から学べるチャンネル多数
まずは無料教材を活用してから有料教材を検討しましょう。
よくある質問:騙されないための知識
Q1:「合格者続出!」「満足度98%」は信用できる?
A:半分ウソです。
理由:
- 「元々できる子」だけの統計
- 「できない子」の失敗率は非公表
- 都合の良いデータのみ抽出
Q2:学校の先生推薦なら安心?
A:多くの先生も騙されています。
現実:
- 多くの先生は「普通以上の子」しか見ていない
- 「できない子」の実情を知らない
- 教材会社の営業を信じている場合も
Q3:高い教材なら手厚いサポートがある?
A:サポートと教材の質は別問題。
真実:
- 高額でもサポートは形だけ
- 基礎ができない子には意味がない
- 安い教材+正しい指導の方が効果的
まとめ:教材業界の罠から身を守ろう
教材選びで騙されないために:
❌ Amazon売れ筋 = 良い教材ではない
❌ 短期間系はほぼ詐欺
❌ 過去問から始めるのは自殺行為
❌ 高額教材 ≠ 高効果
❌ 1冊ですべて対策は不可能
⭕ 現実的な自己レベル診断
⭕ 基礎からの段階的学習
⭕ 教材は安くても効果的なものを
⭕ 無料教材も積極活用
⭕ 長期間での学習計画
「できない子」が英検に合格するために必要なのは、高い教材でも魔法の方法でもありません。
正しい教材選びと、基礎からの段階的な学習です。
教材に騙される前に、まず子どものレベルを正直に見つめてください。
そして、そのレベルに合った教材を選んでください。
be動詞から怪しい子が、過去問や単語帳に手を出しても時間とお金の無駄。
まずは中学英語の基礎を固めることから始めましょう。
遠回りに見えても、それが合格への最短距離です。
教材選びで失敗した経験がある方も大丈夫。
正しい教材で学び直せば、必ず英検に合格できます。
基礎から一緒に頑張りましょう!