昔の常識が通用しない現実
「ライティングで稼いで、他でカバーすれば大丈夫でしょ?」
これは保護者の方からよく聞く言葉です。確かに、昔はこの戦略で合格できました。
でも、2016年以降、この考えは完全に間違いになったんです。
実際に指導していて痛感するのは、多くの人がいまだに古い制度で英検を考えているということ。
その結果、「なぜ落ちたのかわからない…」という相談が後を絶ちません。
今回は、意外と知られていないCSEスコア制度の罠と、なぜ「ライティングで稼ぐ」戦略が通用しなくなったのかを、現場からの本音で解説します。
CSEスコア制度とは?多くの人が知らない真実
2016年の大きな制度変更
変更前(〜2015年):
- 各技能の合計点で合否判定
- 1技能が苦手でも他でカバー可能
- 「ライティングで稼ぐ」戦略が有効
変更後(2016年〜):
- 各技能に最低基準点を設定
- 1技能でも基準を下回ると不合格
- バランス型学習が必須
CSE(Common Scale for English)とは
CSEスコアの仕組み:
- 英語4技能を共通尺度で測定
- 各技能で一定スコア以上が必要
- 統計的手法で毎回調整
準2級の場合:
- 1次試験合格:1322点(各技能平均441点以上目安)
- 2次試験合格:406点
重要:各技能で極端に低いスコアがあると、他が高くても不合格
なぜ「ライティングで稼ぐ」が通用しなくなったのか
昔の成功例(〜2015年まで)
生徒Aさんの例(制度変更前):
- リーディング:5割
- リスニング:4割
- ライティング:9割
- 結果:合格(総合点でクリア)
この戦略が有効だった理由:
- 合計点のみで判定
- 得意分野で不得意分野をカバー可能
- ライティングは型で高得点を取りやすい
現在の厳しい現実(2016年〜)
同じ生徒が現在受験したら:
- リーディング:5割(基準点割れ)
- リスニング:4割(基準点割れ)
- ライティング:9割(高得点)
- 結果:不合格(リーディング・リスニングが基準点未満)
CSEスコア制度の厳しさ:
どれか1技能でも基準点未満
↓
他の技能がどんなに高くても
↓
容赦なく不合格
現場で見る典型的な失敗例
中3のBさん(2024年受験): 「ライティングは得意なんです。型を覚えて8割取れます!」
結果:
- リーディング:3割(アウト)
- リスニング:4割(ギリギリアウト)
- ライティング:8割(高得点も意味なし)
- 不合格通知
保護者の困惑: 「ライティングは良かったのに、なぜ落ちたんですか?」
答え:CSEスコア制度を理解していないから
多くの人が知らない各技能の最低ライン
準2級の現実的な最低ライン(推定)
1次試験各技能の目安:
- リーディング:6割以上
- リスニング:6割以上
- ライティング:6割以上
2次試験:
- スピーキング:6割以上
注意:これは推定値。実際のCSEスコアは非公開
なぜ6割なのか?
CSEスコア計算の特徴:
- 毎回の試験難易度で調整
- 統計的に「標準的な受験者」の6割程度が基準
- 5割以下はほぼ確実にアウト
つまり: どの技能も「人並み以上」の成績が必要。1技能だけ得意では不十分。
制度変更を知らない人たちの典型パターン
パターン1:昔の成功体験を語る指導者
よくある光景: 「私の時は、ライティングで稼いで合格したよ」 「作文が得意なら大丈夫!」
現実:
- 10年前の話
- 制度が根本的に変わっている
- 古い情報で指導
パターン2:ネット情報を鵜呑みにする保護者
よくある勘違い:
- 「ライティング対策だけ塾に通わせよう」
- 「作文の型を覚えれば合格」
- 「他は何とかなる」
結果:
- リーディング・リスニングが足りず不合格
- 時間とお金の無駄
パターン3:制度変更を知らない塾講師
驚きの事実:
- 一部の塾講師もCSEスコアを理解していない
- 昔の指導法をそのまま継続
- 生徒が落ちても原因がわからない
実際の相談例: 「塾の先生が『ライティングで稼げ』って言ったのに落ちました…」
バランス型学習の重要性
すべての技能で6割以上を目指す
新しい合格戦略:
リーディング:6-7割
リスニング:6-7割
ライティング:6-7割
スピーキング:6-7割
ポイント:
- どの技能も「そこそこ」できる
- 1技能だけ突出しても意味なし
- バランスが最重要
「できない子」こそバランス学習を
従来の誤解: 「できない子は得意分野で稼ぐべき」
CSEスコア制度下の現実: 「できない子こそ、すべての技能を底上げすべき」
なぜなら:
- 1技能でも基準割れすると不合格
- 得意分野だけでは救われない
- 弱点克服が合格への最短距離
読めない→聞き取れない問題の深刻さ
CSEスコア制度が露呈させた根本問題
多くの「できない子」の現実:
基礎文法不足
↓
英文が読めない(リーディング低下)
↓
聞き取れない(リスニング低下)
↓
2技能同時に基準点割れ
↓
ライティング・スピーキングが良くても不合格
つまり: 「読めない→聞き取れない」問題を解決しない限り、CSEスコア制度下では合格不可能
なぜライティングだけでは不十分なのか
ライティングの特殊性:
- 型にはめれば書ける
- 辞書的知識でカバー可能
- 時間をかけて考えられる
リーディング・リスニングの難しさ:
- 瞬時の理解力が必要
- 基礎文法力が不可欠
- 語彙を文脈で認識する力が必要
現実: ライティングで8割取れても、リーディング・リスニングが4割なら確実に不合格
正しい対策法:バランス重視の学習戦略
Step1:基礎力の底上げ(最重要)
「読めない→聞き取れない」問題の解決:
- 中学英文法の完全理解
- 基本語彙の文脈での習得
- 簡単な英文の音読練習
使用教材:
Step2:各技能のバランス強化
リーディング対策:
- 中学レベルの長文から開始
- 精読→音読で基礎固め
- 徐々に準2級レベルへ
リスニング対策:
- 読めるものから聞く練習
- 音読した英文の音声を聞く
- シャドーイング練習
ライティング対策:
- 基本の型をマスター
- 中学語彙で書く練習
- 添削で質を向上
スピーキング対策:
- ライティングの型を口頭で練習
- attitude重視の練習
- 録音して客観的チェック
Step3:模擬試験で各技能のスコア確認
重要:
- 各技能6割以上を必ず確認
- 弱点技能があれば集中対策
- バランスが取れてから本番受験
よくある質問:CSEスコアの疑問
Q1:CSEスコアの詳細は公開されていないのでは?
A:その通りです。だからこそ危険。
現実:
- 正確な基準点は非公開
- 受験者は手探り状態
- 結果が出るまで合否不明
対策:
- 各技能7割以上を目標に
- 安全マージンを取る
Q2:昔合格した人のアドバイスは参考にならない?
A:2015年以前の合格体験談は要注意。
理由:
- 制度が根本的に変更
- 当時有効だった戦略は現在無効
- 最新情報に基づく対策が必要
Q3:なぜ制度変更したの?
A:より実用的な英語力を測るため。
英検協会の意図:
- 4技能バランスの重視
- 実際のコミュニケーション能力の測定
- 国際基準との整合性
まとめ:古い常識を捨てて、新しい戦略で挑もう
CSEスコア制度下での現実:
❌ ライティングで稼いで合格は不可能
❌ 1技能突出型では合格できない
❌ 昔の成功体験は通用しない
❌ 制度変更を知らない指導者は危険
⭕ 全技能6割以上が必須
⭕ バランス型学習が最重要
⭕ 基礎力の底上げが合格への近道
⭕ 「読める→聞き取れる」の実現
⭕ 最新制度に基づく対策
「ライティングで稼ぐ」という古い常識を捨てて、新しい戦略で英検に挑みましょう。
CSEスコア制度は確かに厳しくなりました。
でも、正しく理解すれば恐れることはありません。
すべての技能をバランス良く伸ばすことで、確実に合格に近づけます。
特に「できない子」は、基礎力の底上げから始めてください。
「読めない→聞き取れない」問題を解決すれば、リーディングとリスニングが同時に改善し、CSEスコア制度下でも合格できます。
遠回りに見えても、基礎からの積み上げが最短距離です。
古い情報に惑わされず、現在の制度に合った正しい対策で、一緒に合格を目指しましょう!
CSEスコア制度について詳しく知りたい方は、英検協会の公式サイトもチェックしてみてください。
正しい情報で、効率的な学習を進めていきましょう!