「まず単語から」という呪縛
「英検の勉強、何から始めたらいいですか?」
この質問への答えは、決まって同じです。
「まず単語からやります!」

そして、Amazon検索で必ず買ってくるのが『英検準2級 でる順パス単』。
ベストセラー1位だから間違いない、と。
でも、ちょっと待ってください。
その生徒たち、何回受験しても合格していません。
塾で15年間指導してきて確信していることがあります。
「まず単語から」で英検に受かった「できない子」を、私は一人も見たことがありません。
今回は、なぜ「単語学習」が英検不合格の元凶になるのか、現場からの本音をお話しします。
でる順パス単Amazon1位の罠
なぜみんなパス単を買うのか
Amazon検索結果の現実:
- 「英検 準2級」で検索
- 1位表示:でる順パス単
- レビュー評価も高い
- みんな「とりあえずこれ」で購入
売れる理由:
- 「出る順」という安心感
- 音声アプリ対応で現代的
- 値段も手頃(1,400円程度)
- 英検対策の「定番」という認知
パス単の問題点
1. 前提レベルが高すぎる
パス単の想定ユーザー:
- 中学英文法は完璧
- 基本語彙(中学1,200語)は習得済み
- 文章読解力がある程度ある
「できない子」の現実:
- be動詞と一般動詞の区別があやふや
- 基本語彙も怪しい
- そもそも英文が読めない
2. 孤立した単語暗記
パス単の学習方法:
- 英単語 → 日本語意味
- 文脈なしの機械的暗記
- 発音はアプリで確認
現実の問題:
- 覚えても文章で認識できない
- 使い方がわからない
- すぐに忘れる
なぜ「まず単語から」では失敗するのか
読めない→聞き取れない→話せない
英語力の基盤は「読む力」です。
これが英語学習の大原則。
負のスパイラル:
基礎文法不足
↓
英文が読めない
↓
単語を覚えても文章で拾えない
↓
リスニングでも認識できない
↓
話すときも使えない
↓
結果:不合格
文脈なしの暗記は定着しない
実際の指導例:
生徒:「先生、『reputation』は『評判』って覚えました!」
私:「じゃあ、この文章読んでみて」
文章:“The company has a good reputation.”
生徒:「えーっと…『会社』は…『reputation』は『評判』だから…あれ?」
単語は覚えたのに、文章では認識できない。
これが「できない子」の典型パターンです。
モチベーション維持が困難
パス単学習の現実:
- Day1: やる気満々で20語暗記
- Day3: 前日の単語を忘れている
- Day7: 「全然覚えられない…」
- Day10: 挫折、放置
保護者からの相談: 「パス単買ったんですが、3日で投げ出しました…」
当然です。
基礎ができていない子が、いきなり準2級語彙1,500語を覚えられるはずがない。
英語学習の正しい「パラレル」とは
単語・文法・リーディングの同時進行
正しい英語学習の原則:
英語はパラレル(並行)学習が基本。
単語だけ、文法だけでは絶対に身につきません。
効果的な学習サイクル:
簡単な英文を読む
↓
わからない単語を文脈で推測
↓
文法ルールを確認
↓
音読で定着
↓
次の英文へ
このサイクルで、単語・文法・読解力が同時に伸びます。
文章の中で単語を覚える重要性
例:「important」を覚える方法
❌ 悪い例(パス単式): important = 重要な(暗記)
⭕ 良い例(文脈式): “English is important for your future.” (英語は君の将来にとって重要だ)
文脈で覚えると:
- 使い方がわかる
- 記憶に残りやすい
- 実際に使える
基礎レベルから段階的に
「できない子」に必要な語彙学習順序:
- 中学基本語彙の完全習得(800語)
- 基本文法+語彙の統合学習
- 簡単な英文での実践
- 準2級語彙の段階的追加
いきなり準2級語彙は無謀。
基礎から積み上げることが重要。
「できない子」に効果的な学習順序
Step1: 基礎診断(1週間)
まず現状把握:
- 中学英文法チェックテスト
- 基本語彙チェック(500語レベル)
- 簡単な英文読解テスト
基準:中学3年教科書が8割読めない場合は基礎からやり直し
Step2: 基礎固め(2-3ヶ月)
使用教材: 『中学英語をもう一度ひとつひとつわかりやすく。』
学習方法:
- 文法説明を読む
- 例文を音読(単語も自然に覚える)
- 簡単な練習問題
- 音読で定着
ポイント:この段階でパス単は絶対NG
Step3: 統合学習(2-3ヶ月)
使用教材: 『くもんの中学英文法』 『速読英単語 入門編』
学習方法:
- 短い英文を読む
- 文脈で新しい単語を覚える
- 文法ルールを確認
- 音読で定着
Step4: 準2級レベル移行(1-2ヶ月)
この段階でようやく:
- 準2級過去問にチャレンジ
- 不足語彙を文脈で補強
- 面接・ライティング対策
注意:この段階でもパス単メインはNG
パス単を使うならこう使え
どうしてもパス単を使いたい場合
効果的な使い方:
- 基礎固め完了後に補助として使用
- 単語単体で覚えない
- 必ず例文と一緒に学習
- 音読で定着
NG使用法:
- いきなりパス単から開始
- 単語カードで機械的暗記
- 音声だけ聞き流し
より効果的な代替案
文脈重視の語彙学習教材:
- 『速読英単語 入門編』(Z会)
- 短い英文で語彙学習
- 文脈で自然に覚える
- 段階的レベルアップ
- 『システム英単語Basic』(駿台)
- 例文が豊富
- 使い方がわかりやすい
- 中学レベルから対応
パス単よりも「できない子」には効果的。
よくある反論への回答
Q1:「でる順だから効率的では?」
A:「できない子」には逆効果です。
理由:
- 基礎ができていないのに応用語彙を覚えても使えない
- 「出る順」の前に「理解できる順」が大切
- 効率より定着を重視すべき
Q2:「みんな使ってるから間違いないのでは?」
A:「みんな」の中に「できない子」は含まれていません。
現実:
- パス単で成功するのは「元々できる子」
- 「できない子」の失敗談は表に出ない
- Amazon レビューにも偏りあり
Q3:「単語力がないと何もできないのでは?」
A:単語力と語彙学習方法は別問題です。
正解:
- 単語力は必要(これは事実)
- でも学習方法が間違っている
- 文脈で覚える方が効果的
まとめ:単語帳信仰から脱却しよう
「まず単語から」が失敗する理由:
❌ 孤立した暗記は定着しない
❌ 文章で使えない
❌ 基礎力不足を無視している
❌ モチベーション維持困難
❌ 読めない→聞き取れない→話せない
正しい語彙学習:
⭕ 基礎文法と並行学習
⭕ 文脈の中で覚える
⭕ 段階的レベルアップ
⭕ 音読で定着
⭕ 読める→聞き取れる→話せる
パス単を買う前に、まず基礎診断をしてください。
「できない子」がパス単に手を出すのは、泳げない子をいきなり深いプールに放り込むのと同じです。
英検合格に必要なのは、高度な語彙力ではありません。
基礎的な英語力を使って、堂々とコミュニケーションを取る力です。
「読める→聞き取れる→話せる」
この順番を守って、基礎から積み上げていけば、「できない子」でも必ず合格できます。
単語帳に頼る前に、まず基礎を固めましょう。
それが合格への最短距離です。
パス単で挫折した経験がある方も大丈夫。
正しい方法で学び直せば、必ず英検に合格できます。
一緒に頑張りましょう!